【ひっくり返せば】
酒樽―樽酒
酒樽は酒を入れておく樽です。新年会やお祝いの席で、薦被りの酒樽の蓋を木槌で叩いて鏡開きをして、桝で飲みます。桝は限りがあるのでグラスを使うこともあります。
酒樽をひっくり返すと樽酒になります。酒樽に入っていた、木の香がなんともいえない樽酒になります。桝でいただくと樽酒は雰囲気が違います。
半世紀くらい前には、東京でも酒屋は量り売りが行われていました。さすがに通い徳利ではなくビンでしたが、酒屋には酒樽が並んでいて、吞み口の木の栓を抜いて桝に酒をそそぎ、桝から漏斗をつかってビンに入れていました。味噌、醤油も量り売りでした。味噌は経木に包んでくれました。経木は刺身の盛り付けにも使われていました。プラスチックは彩りを工夫していますが、何とも風情はありません。
ところで、樽と桶の違いは何でしょう。
西洋樽はみなさんご存じの形です。
ウイスキーやワインの貯蔵・熟成樽はCMなどで見る機会が多いですね。
では日本の樽はどんな形でしょう。
酒樽の他に、醤油樽、味噌樽などがあります。酢、油のような液体は樽を使いました。
一方桶は、風呂桶、漬物桶、湯桶、洗い桶、すし桶、棺桶、天水桶、などがあります。
酒樽と漬物桶は似たような形です。漬物樽もありました。
樽と桶の大きな違いは樽は蓋をして貯蔵できるようにすることです。
酒、醤油、味噌などを貯蔵、運搬するための容器です。
桶は蓋をすることがあっても貯蔵・運搬のためではありません。
また、桶は木の正目を使うことが多く。風呂桶(現在では木の風呂桶はスーパー銭湯などで見られます)や手桶、すし樋などを見ると、木の木目が平行になっていることが分かります。